第96回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題Ⅵ)


38.胸腰椎移行部骨折に対するインストルメント固定と固定範囲の力学的影響
 
山口大学医学部附属病院 整形外科
 
西田 周泰(にしだ のりひろ)、今城 靖明、鈴木 秀典、舩場 真裕、陳 献、坂井 孝司
 
【はじめに】胸腰椎移行部椎体骨折に対し、固定術が行われ良好な成績が報告されている。同固定範囲であっても、骨粗鬆症やDISHなど各病態で骨折部とインストルメントへの影響は異なる。椎体骨折・病態モデル・後方固定モデルを作成し、応力解析を行った。
【方法】CTから前縦靱帯、後縦靱帯、黄色靱帯、椎間板を含む3次元有限要素法脊椎モデル(T8-L5)を作成し、T12に骨折部を作成した。健常人骨折モデル、骨粗鬆症骨折モデル、DISH骨折モデルを作成し、pediclescrewによる1above1belowと2above2belowモデルを作成した。前後屈の荷重をかけ、骨折部、各椎体、インストルメントへの影響を解析した。
【結果】後方固定範囲が長くなると、骨折部応力が減少した。一方固定の頭尾側椎体の応力が増加した。インストルメントへの応力は、DISH骨折モデルよりも骨粗鬆症骨折モデルの方が影響が大きかった。
【考察】病態、固定範囲によって、骨折形態が同じでも椎体やインストルメントへの応力が変化する。
39.PPSを用いて手術を行った75歳以上中下位腰椎椎体骨折の臨床成績
 
那覇市立病院 整形外科
 
勢理客 ひさし(せりきゃく ひさし)、比嘉 勝一郎、屋良 哲也
 
【対象と方法】75歳以上で高度腰痛や下肢痛・しびれ、膀胱直腸障害で手術を要したL3~L5椎体骨折のうちPPSを用いて固定術のみまたは固定術および除圧術を施行し、術後2年以上の経過観察およびCT評価を行った5例(男性:3例、女性:2例)を対象とした。手術時間、術中出血量、スクリューの緩みや逸脱、CTにおける骨折椎体の骨癒合の有無、骨折椎頭尾側椎間関節の骨性癒合の有無および骨折椎と隣接椎への骨棘架橋の有無、術前および術後の腰痛、下肢痛・しびれのVAS、JOABPEQ、歩行能力について検討を行った。
【結果】平均手術時間は89.2分、平均術中出血量は31mlであった。術前CTでは後壁損傷を3例に認め、MRIでは3例に脊柱管狭窄を認めた。最終診察時においてPPSの緩みを1例に、逸脱を1例に認めた。CTにおける骨折椎体の骨癒合は5例に認めた。椎間関節癒合を2例に認め、骨性架橋を2例に認めた。JOABPEQの疼痛関連障害は術前100点を示した1例除く4例で平均獲得量は53.5点、有効率は100%、腰椎機能障害、歩行機能障害は各項目ともに50点および80%であった。
40.後期高齢者の圧迫骨折に伴う腰椎脊柱管狭窄症

県立広島病院 整形外科
 
西田幸司(にしだ こうじ)、加藤 慶、平田 裕己、松尾 俊宏、中村 光宏、松下 亮介、望月 由
 
【目的】高齢化に伴い後期高齢者の腰椎圧迫骨折は増加している。骨折に伴う狭窄により除圧術を要することがあるが、これまで報告は少ない。本研究の目的は、手術を要した後期高齢者の圧迫骨折に伴う腰部脊柱管狭窄症の特徴について調査することである。
【対象と方法】圧迫骨折を伴った腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症に対し、後方除圧術のみを施行した8例(男性2、女性6)、平均年齢82歳を対象とした。骨折高位、骨密度(大腿骨頚部 YAM)、除圧椎間数、除圧高位、椎間可動域、旧JOAスコアについて調査した。
【結果と考察】圧迫骨折は2椎体2例含めるとL2:3、L3:2、L4:3、L5:2例、大腿骨頚部 YAMは平均65.4%であった。除圧椎間数は1椎間:3、2椎間:3、4椎間:1例、骨折に伴う最狭窄高位はL2/3:5、L3/4:2、L4/5:1例で、可動域は術前平均7.1°から術後4.7°に減少。旧JOAスコアは術前平均15.9から術後25.6(改善率76.6%)に改善していた。骨折部位はL2~5に分布していたが、除圧椎間はL2/3が62.5%と最も多く、圧迫骨折が手術高位や狭窄数増加に影響していたと思われた。
41.軽微な動作を契機に脊髄損傷となった胸椎黄色靭帯骨化症の1例
 
大分整形外科病院
 
三尾 亮太(みお りょうた)、大田 秀樹、木田 吉城、井口 洋平、田原 健一、吉村 陽貴、藤村 省太、竹光 義治
 
【はじめに】胸椎黄色靭帯骨化症(OLF)は下肢のしびれや歩行困難の原因となり、ときに重篤な神経障害をもたらす。我々は軽微な動作を契機に脊髄損傷となったOLFを経験したので報告する。
【症例】84歳、男性。孫を抱えた瞬間、両下肢のしびれと脱力感が出現し、起立不能、尿閉となった。MRIではTh10/11に脊髄の圧排を、CTでは同部位に黄色靭帯の骨化を認めた。当院受診後2日目に、Th10/11のOLF切除及び後方固定を施行した。術後は尿閉、下肢筋力は徐々に改善し、術後4ヶ月の時点で排尿障害は改善し、杖歩行可能となった。
【考察】過去の報告では、胸髄症で手術を行った症例の42.4%がOLFであり、胸髄症手術例の7%が転倒による急性発症であるとされている。胸椎変性疾患においてOLFは比較的頻度の高い疾患であり、軽微な外傷や身体活動で急性の胸髄症を発症することがある。症状発現にはOLFによる脊髄圧迫だけでなくmicromotionが関与している可能性があり、手術療法を選択する際には、骨化切除のみでなく固定術を併用することが望ましい。
42.脊椎インスツルメントを用いて早期離床を図った脆弱性骨盤骨折の治療成績
 
産業医科大学 整形外科
 
岡田 祥明(おかだ やすあき)、善家 雄吉、佐藤 直人、濱田 大志、山田 晋司、邑本 哲平、中村 英一郎、酒井 昭典
 
【はじめに】脆弱性骨盤骨折(Fragility fracture of pelvis:FFPs)は大腿骨近位部骨折と同程度の歩行能力の低下、転帰を辿ることが報告されており問題となっている。
【目的】当院における脊椎インスツルメントを用いて早期離床を図った脆弱性骨盤骨折の治療成績を報告する。
【対象・方法】脊椎インスツルメントによる後方固定を行ったFFPs患者24例、女性24例、平均年齢83.7±5.9歳。骨折形態はRommens分類で2b 1例、2c 1例、3a 10例、3c 1例、4a 1例、4b 10例であった。手術は全例Trans Iliac Rod Fixation(TIRF)による後方固定を行った。症例に応じて恥骨Screwを追加している。後療法は疼痛に応じて翌日より全荷重を許可し、早期離床を目標にリハビリを行った。
【結果】平均手術時間は113 ± 20分、平均出血量152±104cc、車椅子への移乗は術後平均1.1±0.4日、歩行器歩行開始時期は平均4.2±2.2日、合併症は皮膚障害、表層感染が1例、Rodの脊柱管内への迷入が1例、観察期間内の死亡例は1例(術後2年)であった。
【結語】FFPsに脊椎インスツルメントを用いて後方固定を施行することで早期離床を行えQOL低下を回避できることが示された。
43.脆弱性仙骨骨折に対する骨接合術によりL5神経痛が改善した3例
 
佐賀県医療センター 好生館
 
眞島 新(ましま あらた)、林田 光正、馬場 覚、塚本 伸章、高村 優希、 清水 黎玖、大森 治希、土居 雄太、平林 健一、松下 優、小宮 紀宏、前 隆男
 
【はじめに】骨粗鬆症患者の増加に伴い脆弱性骨盤輪骨折は増加傾向である。中でも脆弱性仙骨骨折は神経根の刺激症状を生じうると報告されているが、脊椎疾患由来の症状との鑑別は困難である。今回、保存的治療に抵抗性であった脆弱性仙骨骨折に対し診断的治療として骨接合術を行い、術後速やかにL5神経痛が改善した3例を経験したので報告する。
【症例】年齢は74~81歳、全例女性。明らかな外傷機転なく急性に臀部~下腿外側の疼痛が出現し体動困難となった。全例で腰椎の変性を認め、脊椎疾患によるL5神経痛の可能性が考えられた。さらに仙骨叩打痛を認め、CT・MRIで脆弱性仙骨骨折の合併が確認できた。当初保存的加療としたが、疼痛が持続しADL障害を認めたため仙骨骨接合術を施行。臀部・下肢痛は術後速やかに改善した。
【結語】仙骨骨折で神経根症状を生じうるという報告はあるが、渉猟し得た限り確定診断がなされた報告はない。仙骨骨接合術により速やかに改善したことから、神経根症状が仙骨骨折によって生じると考えられた。
44.脆弱性仙骨骨折に対する経腸骨経仙骨スクリュー固定での治療経験
 
JA広島総合病院
 
土川 雄司(つちかわ ゆうじ)、山田 清貴、橋本 貴士、水野 尚之、平松 武、宇治郷 諭、松島 大地、藤本 吉範
 
【背景と目的】脆弱性仙骨骨折は見逃され易く、疼痛によってADLに支障をきたすことが少なくない。本骨折に対し当科で行っている経腸骨経仙骨スクリュー(Transiliac-transsacral screw: TITSS)固定の治療経験について報告する。
【対象と方法】2021年4月~2022年3月に脆弱性仙骨骨折による疼痛で離床や歩行が困難であった9例(男性2例 女性7例 手術時平均年齢 78.4歳)に対してTITSS固定を行った。手術は透視下に小皮切で6.5mm径のcannulated screwを挿入した。全例で術中神経モニタリングを行なった。手術時間、出血量、術前後のVAS、離床までの日数、術後CTでのscrew逸脱の有無について調査した。
【結果】手術時間は平均39.7分、出血量は平均7.4cc、モニタリングの異常やscrewの逸脱を認めた症例はなく、全例で術前よりVASは改善、術翌日から離床が可能であった。本術式は脆弱性仙骨骨折に対して除痛効果があり、低侵襲であることから早期の離床が可能であった。
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