19.Shape factor: 胸椎硬膜内髄外腫瘍における、新規画像的予後予測法の開発 九州大学医学研究院 整形外科 松本 嘉寛(まつもと よしひろ)、川口 謙一、幸 博和、小早川 和、松下 昌史、中島 康晴 胸椎硬膜内髄外脊髄腫瘍(Intra dural extramedullary tumor: IDEMT)の術後成績の予後予測因子の報告は限られている。脊髄症を呈する43 例の IDEMT を対象とし、腫瘍による最大圧迫 レ ベ ル で の、 術 前 の 脊 髄 横 断 面 積(Crosssectional area: CSA)と脊髄周径(Perimeter: P)を測定した。その後、形状の特徴を表す指標 ( 特徴量)の一つである Shape Factor (SF)を 4 π xCSA/P2 の式で算出した。CSA の平均値は 27.8 ±15.8(mm2)、周長は 28.8 ± 6.1(mm)、SF は 0.385± 0.14 であった。術後の JOA スコア 9 点以上を成績良好 ( 良好群 32 例)、未満を不良群 (11 例)に 2 群化した。不良群では、CSA と SF が平均値が有意に低下していた。多変量解析では、SF のみが有意な予後予測因子であった(オッズ比2.66、95% 信頼区間 1.10-6.39、p=0.0115、)。SF は IDEMT 術後の神経機能回復に対する新たな画像的予後予測法となる可能性がある。 |
20.腫瘍脊椎骨全摘出術 (TES) を施行した胸椎軟骨肉腫再発の 1 例 琉球大学 整形外科 島袋孝尚(しまぶくろ たかなお)、金城 英雄、山川 慶、深瀬 昌悟、大城 裕理、當銘 保則、西田 康太郎 胸椎軟骨肉腫術後に局所再発をきたし、腫瘍脊椎骨全摘出術 Total en bloc spondylectomy (TES)を施行した 1 例を経験したので報告する。 【症例】36 歳、男性、2 年前より背部痛が出現し、疼痛増強したため当院を受診した。背部に 10cm大、弾性硬、可動性不良の腫瘤を触知し、神経学的異常所見は認めなかった。MRI で T7 ~ 10 高位に T1 で low、T2 で high を呈し、不均一な造影効果を有する腫瘍が脊柱管背側を占拠していた。CT ガイド下生検 (病理診断:軟骨肉腫 gradeⅠ) 後に T5 ~ 11 後方固定を併用した腫瘍切除術(辺縁切除)を施行した。術後病理診断は軟骨肉腫 grade Ⅱであった。術後 1 年、対麻痺 (両下肢 MMT2-3) 、尿・便失禁が出現した。MRI でT8 ~ 9 に局所再発を認め、胸髄は著明に圧排されていた。同日緊急後方除圧を行い、後日 TES (T8~ 10) を施行した。TES 後病理診断は軟骨肉腫 grade Ⅲであった。術後両下肢筋力は MMT4 に回復した。術後 9 ヵ月で局所再発は認めていないが、両肺転移が出現し、肺腫瘍楔状切除を施行した。 |
21.脊髄硬膜動静脈瘻の治療経験 JA 広島総合病院 整形外科 村上 欣(むらかみ やすし)、山田 清貴、橋本 貴士、水野 尚之、平松 武、宇治郷 諭、小野 翔一郎、藤本 吉範 【目的】当院で手術を施行した脊髄硬膜動静脈瘻の画像所見と治療成績について後ろ向きに調査した。 【対象と方法】2011 年 11 月から 2020 年 2 月までに脊髄硬膜動静脈瘻と診断し、顕微鏡下にシャント切離術を行った 7 例 ( 男性 5 例、女性 2 例、平均年齢66.1 歳 ) を対象とした。動静脈シャントの高位とシャント血管の本数について術前画像検査 ( 造影 MRI・造影 CT・血管造影 ) と術中所見の整合性を評価した。手術成績は、術前後の MRI 所見と神経症状を評価した。 【結果】シャント高位はいずれの画像も一致した結果が得られ術中所見との解離はなかった。シャント血管は術前に全例で 1 本と診断されたが、術中にシャント血管を 2 本認めた症例が 2 例ありこの症例ではシャント切離を 2 か所施行した。術後全例で神経症状は改善し、術後 3 か月 MRI でnidus は消失し脊髄の腫大・信号変化も改善した。 【考察】脊髄硬膜動静脈瘻 7 例に対しシャント切離術を行い、良好な臨床成績を得た。術前検査で確認できなかったシャントを複数認めた症例もあり、術中所見を注意深く観察することが重要であると考える。 |
22.当院における硬膜外膿瘍の検討 市立宇和島病院 整形外科 河野 康平(こうの こうへい)、藤田 勝、岩本 昌也、青木 一将、伊藤 輝人、樋野 正典、石橋 伸輔 【目的】当科で治療した脊椎硬膜外膿瘍の臨床像・治療内容を検討した。 【対象】脊椎硬膜外膿瘍の 13 例(2010~2021)、男性8 例、女性 5 例、平均年齢 64.8 歳(19 ~ 91 歳)であった。合併症、臨床症状、罹患部位(画像所見)、治療法、起因菌、転帰について調査・検討した。 【結果】合併症は糖尿病が 6 例と多かった。臨床症状は患部の疼痛が 12 例(92%)、発熱が 10 例(77%)、筋力低下が 4 例(30%)、膀胱直腸障害が 4 例(30%)。罹患部位は頸椎 2 例、胸椎 4 例、腰椎2 例、腰仙部 3 例、胸腰椎 1 例、頸椎から腰椎までが 1 例であった。膿瘍の位置は硬膜前方 6 例、後方 6 例、1 例は全周性であった。初期治療は 5例で手術(後方除圧術)、8 例が保存治療で保存治療が失敗した 2 例に追加手術が行われた。起因菌は黄色ブドウ球菌が 7 例、肺炎球菌が 1 例であった。麻痺のあった 6 例(膀胱直腸障害含む)で有意な改善をみとめた。手術予定であった 1例が敗血症で死亡した。 【考察】重度麻痺症例の全てで膿瘍の位置が硬膜後方であった。膿瘍の位置と予後との関連は意見が分かれており今後検討が必要と考える。 |
23.口腔インプラント感染に続発した頚椎化膿性脊椎炎の 1 例 島根大学 整形外科 永野 聖(ながの さとる)、河野 通快、沖田 聡司、真子 卓也、内尾 祐司 【症例】73 歳男性。口腔インプラントの既往あり。1週間前から頚部痛があり、急速に四肢麻痺が進行したため当院へ救急搬送された。来院時、AIS A(C5)の四肢麻痺と炎症反応の上昇があり、MRIで C4/5 椎間板炎と硬膜外膿瘍を認めた。CT でC3-6 分節型後縦靱帯骨化巣のほか、下顎インプラント周囲に骨溶解を伴う膿瘍形成を認めた。インプラント周囲から排膿があったが、前方は天然歯と連結され動揺はなかった。口腔インプラント感染に続発した頚椎化膿性脊椎炎と診断し、緊急で後方除圧固定術(C2-7)および前方除圧固定術(C4/5)を施行した。翌日、歯科口腔外科で下 顎 イ ン プ ラ ン ト を 抜 去 さ れ た。 原 因 菌 はStreptococcus mitis/oralis で、感受性のある抗菌 薬を 8 週間投与し感染が沈静化した。術後 3 か月で四肢麻痺が改善し介助による歩行訓練が可能となった。 【考察】齲歯の治療後に化膿性脊椎炎が続発した報告があるが、口腔インプラント感染が先行した報告はない。脊椎感染症の先行感染巣として口腔インプラントの有無を含めた歯科治療歴の確認や口腔内評価が感染経路の特定に有用であると考える。 |