第94回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題Ⅱ)


6.歩行能力からみた頚椎 OPLL の重症化因子の検討

大分整形外科病院
 
柴田 達也(しばた たつや)、大田 秀樹、松本 佳之、木田 吉城、井口 洋平、巽 政人、田原 健一、三尾 亮太、吉村 陽貴、木田 浩隆、竹光 義治
 
【目的】歩行能力からみた頚椎 OPLL の重症化因子を検討した。
【対象】2014 年から 2020 年に手術を行った 154 例。術式は前方固定 17 例、後方除圧 137 例。JOAscore 下肢機能 4 点満点中 1.5 点以下を重症(G群)、2 点以上を軽症(K 群)とした。G 群が 28 例、K 群が 126 例であった。
【結果】年 齢:G 群 68 才、K 群 62 才、 外 傷 あ り:G群 11 例、K 群 13 例、手術待機期間:G 群平均 4.7カ月、K 群平均 9.4 カ月、JOA 改善率:G 群平均34%、K 群 平 均 37%、MRI 狭 窄 率:G 群 平 均51%、K 群平均 49%、髄内高輝度あり:G 群 17 例、K 群 52 例、責任病変での骨化不連続あり:G 群21 例、K 群 98 例あった。G 群は外傷ありが有意に多く、手術待機期間は有意に短かった。JOA 改善率、MRI 狭窄率、髄内高輝度、責任病変骨化不連続に有意差はなかった。
【結語】下肢機能の重症度は MRI 脊髄圧迫率と一致せず、外傷が重症化の誘因となっていた。重症例の下肢機能改善率は、早期に手術を行ったためか軽症例と同等であった。
7.重度麻痺のある胸椎後縦靭帯骨化症に対する後方除圧固定術の治療経験
 
長崎労災病院 整形外科
 
三溝 和貴(みつみぞ かずたか) 、馬場 秀夫、岩元 俊樹、貞松 毅大、桝本 直哉、小西 宏昭
 
 重度麻痺のある胸椎後縦靭帯骨化症に対して後方除圧固定術をおこなった 13 例について報告する。
 症例は女性 8 例、男性 5 例、平均年齢 58.7 歳(33-77 歳)。10 例が内科疾患を有し、糖尿病の合併は 4 例であった。1 例で同一椎間の手術歴があった。
 手術時間は 303.9 分(171-499 分)、出血量は849.4g(150-3000g)、除圧椎弓数は 4.9 椎弓(3-9椎弓)、固定椎間数は 5.1 椎間(1-8 椎間)であった。全例で椎弓根スクリューとロッドを使用した。硬膜損傷を 3 例に認めたが、髄液漏となった症例はなかった。術後血腫、スクリュー逸脱、創感染のため再手術をおこなった症例が各 1 例ずつあった。
 術前 5 例は歩行不能、8 例は歩行補助具で歩行可能であった。術後 1 年で 6 例が独歩、6 例が歩行補助具を使っての歩行が可能で、歩行困難は1 例のみであった。
 術前、術後 1 年で JOA スコア(11 点満点)を評価できた症例は 7 例で、改善が 5 例、不変が1 例、悪化が 1 例で、術前平均 4.9 点、術後平均
7.0、平均改善率は 25.2% であった。
 重度麻痺のある胸椎後縦靭帯骨化症に対する後方除圧固定術は有用であると思われる。
8.重度下肢麻痺を呈した胸椎黄色靭帯 .後縦靭帯骨化症の手術治療成績
 
大分整形外科病院
 
田原 健一(たはら けんいち)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、巽 政人、柴田 達也、三尾 亮太、吉村 陽貴、木田 浩隆、竹光 義治
 
【目的】重度下肢麻痺を呈した胸椎 OLF ± OPLL に対する手術成績を調査し、軽症例との比較を行った。
【対象】JOA スコア下肢運動機能 4 点満点中 1.5 以下を重度(G 群)、2 点以上を軽度(K 群)と定義。対 象 は G 群 29 例、K 群 23 例(2011.1 ~2020.6)。手術は除圧固定 49 例、除圧 3 例であった。臨床症状は JOA スコア 11 点満点で評価した。
【結果】BMI:G 群 29.1、K 群 24.7、 外 傷 あ り:G 群12 例 K 群 4 例、OPLL 合併:G 群 8 例 K 群 1 例、糖尿病合併:G 群 4 例、K 群 2 例、CT での骨化占拠率 : G 群 54.1%、K 群 38.2%、MRI 髄内輝度変化あり:G 群 19 例 K 群 7 例、JOR 改善率:G群 31.8%、K 群 49.1% であった。BMI、骨化占拠率、髄内輝度変化、OPLL 合併の有無、JOA スコア改善率に有意差を認めた。
【結語】重度下肢麻痺では高 BMI、 高 骨 化 占 拠 率、OPLL 合併、髄内輝度変化が有意に多かった。転倒などの外傷も重症化しやすい傾向を認めた。術後改善率は軽症例で有意に良好であった。
9.胸椎靭帯骨化症の術後長期経過と予後予測因子について
 
久留米大学病院 整形外科
 
森戸 伸治(もりと しんじ)、佐藤 公昭、横須賀 公章、吉田 龍弘、島﨑 孝裕、西田 功太、猿渡 力也、不動 拓眞、志波 直人
 
【背景】黄色靭帯骨化症 (Ossifi cation of ligamentumfl avum:OLF) の術後長期経過と予後予測因子についての報告は少ない。
【目的】胸椎後縦靭帯骨化症 (thoracic ossifi cation ofposterior longitudinal ligament:t-OPLL) と 胸 椎OLF(t-OLF) の術後経過を比較、また術後予後不良因子を調査する。
【方法】2016 年 4 月から 2021 年 3 月までに当院で手術を施行した t-OPLL と t-OLF 25 例を対象とした。手術は全て後方アプローチで除圧術もしくは除圧固定術を施行。年齢、性別、BMI、罹患期間、罹患高位、狭窄率、既往症、術前麻痺、術中モニタリングの波形低下・波形導出率を評価し、術直後と最終観察時の JOA 改善率と相関する因子を調査した。JOA は 11 点法を用いた。
【結果】平均観察期間は 19 か月 (0-54)、25 例中 4 例で術後麻痺を来し t-OPLL 1 例と t-OLF 3 例であった。t-OPLL 1 例は最終観察時の JOA 改善率は19% で、t-OLF 3 例 は -129 ~ -29% で あ っ た。評価項目のうちモニタリング波形低下のみで術直後 JOA 改善率 (P=0.04) と最終観察時 JOA 改善率 (P=0.04) で有意差を認めた。
【結語】術後麻痺を来した t-OLF の長期予後は t-OPLLと同等かそれ以上に悪い可能性が示唆された。術中波形低下が、術直後だけでなく長期予後にも影響を与える可能性が示唆された
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