6.101歳に対する腰椎固定術の経験 鹿児島共済会南風病院 整形外科 富村 奈津子(とみむら なつこ)、古賀 公明、川内 義久 今回我々は 101歳の女性の腰椎椎体骨折に対し、腰椎固定術を行い、良好な結果を得たので報告する。2010年5月22日転倒し、腰背部痛が出現、体動困難になり当院受診。X-p 上異常はみられず、外用薬で経過をみたが、疼痛が持続、5月26日 CT、MRI撮影しL 1 の椎体骨折を認めた。入院し、保存的治療行なったが、X-p 上徐々に椎体の圧壊が進行、受傷後 6 ヶ月の時点で偽関節を呈していた。 しかし安静時痛はなく、動作時の腰痛のみであったため装具の着用と周囲の介助で日常生活は送れていた。2011年6月より両下肢のしびれ感、筋力低下、排尿障害が出現し、CT、MRIを再検、L1 の後壁が脊柱管内に突出し、硬膜菅を圧迫していた。手術が必要と判断し、2011年7月13日手術(L1 椎弓切除、Th11 ~L3 の後方固定術)施行した。手術時間は 3時間24分、出血量は 135 mlであった。術後疼痛は消失、下肢のシビレ、筋力低下、排尿障害も改善し、歩行可能となった。 2016年11月106歳で死去したが、その間腰痛の訴えはなかった。 |
7.高齢者の腰椎レベルで発生した硬膜外動静脈瘻の 1 例 白石共立病院 脳神経脊髄外 1、久留米大学 脳神経外科 2、伊万里有田共立病院 脳神経外科 3 本田 英一郎(ほんだ えいいちろう)1 、広畑 優 2、 田中 達也 3 【はじめに】Spinal extradural AVF(SEAVF) の 特 徴 は venous pouch(VP) を有しており、一旦そこに feeder からの血流は shunt する。 SEAVF は 3 型に分類される。Type A は SIAVF と同様、髄内静脈と shunt して脊髄症状を呈する。 TypeB1: 髄内シャントはないが、硬膜外静脈の一部が high flow を呈し、根症状を示す。 Type B2 は硬膜外腔で AVM のような形態を形成するが無症候性である。今回は SEAVF の Type B1 の 2 例を経験したので報告する。 【症例】 症例 1: 67 歳、男性 18 年前に頸椎 dural AVF にて傍大学病院にて手術をされたが、両下肢の麻痺と膀胱直腸障害は残存した。2017 年右上肢の突然の挙上障害が見られ、MRI にて右脊柱管内 C4/5 の椎間孔に basivertebral vein の拡張した flow void が見られた。 症例 2: 78 歳、男性 1 年前より両下肢へ移動する異常感覚にて発症した。MRI では L3 を中心とした lateral recess に拡張した flow void が認められた。 【結果と考案】 治療は血管内の静脈側から venous pouch を coil と NBCA にて閉塞し、症例 1 は完全閉塞、症例 2 は部分閉塞に留まったが、臨床症状は消失した。SEAVF は血管内治療が極めて効果的で、静脈側からの VP の閉塞にて治療される。 |
8.成人脊柱変形に対し Inverted V-shaped osteotomy を応用して矯正を行った1例 佐賀県医療センター 好生館 整形外科 1、九州大学 整形外科 2 林田 光正(はやしだ みつまさ)1、馬場 覚 1、北出 一季 1、前 隆男 1、川口 謙一 2、岡田 誠司 2、松下 昌史 2、幸 博和 2、松本 嘉寛 2、中島 康晴 2 成人脊柱変形に対し Inverted V-shaped osteotomy を応用し、open-close の要領で矯正しえた症例を報告する。 症例は 68 歳女性、主訴は腰痛。20年前から近医で側弯を指摘され、5 年前から経年的に腰痛が増悪するため当科紹介。立位保持は3分、歩行は 5分の腰痛性間欠跛行を呈していた。Kitchen elbow sign 陽性。明らかな神経学的所見はなし。Xp 所見では T12-L4 で cobb 角 44 度、L2 を頂椎とする右凸側弯を認め、PI 46 度に対し LL -25 度、SVA 190mm の後弯を認めた。手術は L3/4、4/5 に OLIF を施行。2期的に後方から頂椎である L2 の pediculectomy を 施 行 後、 凹 側 で あ る 左 か ら L1/2 椎間の左側 – 腹側に椎体間ケージを挿入。凸側である右から、右側 – 背側の椎体を PSO の要領で頭側の終板を含め楔状に切除した。左側腹側を open、右側背側を close に矯正することで 3 次元的な矯正を行った。 1)矯正の回転中心が硬膜の正中線に近いため矯正作業における神経への影響が少ないこと、2)凹側は椎体間固定の要領で手術が行えること、3)凸側の骨切除範囲が少ないこと、の以上3点が本方法の利点と考える。 |
9.腰椎側方椎体間固定術 (XLIF) 後に後方固定術もしくは除圧固定術を成し得なかった3症例 久留米大学 整形外科 中江 一朗(なかえ いちろう)、佐藤 公昭、山田 圭、 横須賀 公章、 吉田 龍弘、枦元 佑大郎、島﨑 孝裕、 猿渡 力也、永田 見生、志波 直人 当院では XLIF に際し一期的に前側方進入による椎体間固定術を施行し、症状の経過をふまえ、後日二期的に後方固定術ないし除圧固定術を追加している。今回、二期的手術を成し得なかった 3症例を経験したため報告する。 症例 1、 73 歳、 女性 50歳時に腰部脊柱管狭窄症に対し椎弓切除術を施行した。下肢症状が再燃し、56歳時に再除圧術を施行した。70歳時より腰痛、左下肢の痛み、痺れが増悪し保存的加療に抵抗性であった。今 XLIFを施行し、術後は腰痛、下肢症状も改善傾向に あったが尿路感染に罹患した。術後感染の危険性を考慮し二期的手術は施行せず経過観察した。 その他の 2 症例も様々な理由により二期的手術は成し得なかった。 いずれの症例も術中はケージの明らかな不安定性は認め無かったが、術後レントゲンでは経時的にケージの沈み込みを認めた。現時点では腰痛、下肢症状は改傾向にありADLも拡大している。術後成績については引き続き慎重な経過観察が必要である。 |
10.当科における高齢者の腰椎椎弓根骨折の検討 豊見城中央病院 整形外科 上原 邦彦(うえはら くにひこ)、伊佐 真徳、嘉数 哲 【目的】 当科で経験した高齢者腰椎椎弓根骨折について検討した。 【症例】 男性 1例、女性 3例、年齢は 73 ~ 81歳(平均 76.0歳)。L4 両側:3例、L3 両側:1 例であった。椎弓根骨骨折が発症した椎体には椎弓根骨骨折に先行する椎体骨折はなかった。3例に外傷歴はなく、1例に症状発症の 3 年前に転倒のエピソードがあった。 既往歴に関節リウマチ:1例、慢性腎不全(維持透析):2例があり、全例に骨粗鬆症を認め、ビスホスホネート製剤の治療中であった。慢性腎不全の1例は腰椎後方除圧術の手術歴があった。全例に腰痛と腰部脊柱管狭窄による下肢痛があり、2例に椎弓根スクリューを併用した後方除圧固定を施行した。 【結果】 手術 2症例で腰痛、下肢痛は改善した。保存治療の1例は、転医。他の1例は手術の検討中である。 【考察】 椎弓根骨折は稀な骨折であるが、過去に腰椎術後、骨粗鬆症性椎体骨折の隣接椎、アスリートなどに発症した報告が散見され、ストレス骨折として報告されている。当科で経験した症例も同様にストレス骨折が考えられた。 |