第91回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題1)


1.高齢者における頚椎歯突起骨折の保存治療

総合せき損センター 整形外科

李 容承(い よんすん)、林 哲生、久保田 健介、益田 宗彰、森下 雄一郎、坂井 宏旭、髙尾 恒彰、森 英治、河野 修、前田 健

【目的】頚椎歯突起骨折は近年の高齢化と共に増加傾向であり、当院では麻痺を認める場合は手術治療を行っているが、麻痺がない場合は保存治療を行っている。今回、当院における高齢者歯突起骨折の保存治療後の生存率、頚部痛、歩行機能等について報告する。
【方法】対象は、2013年以降の急性期歯突起骨折例で、65歳以上に限定した。頚部痛はVAS、歩行機能は頚髄症JOA スコアの下肢運動機能の項目(range: 0- 4)を用いて評価した。
【結果】症例は12例(男性9例、女性3例)で、治療開始時年齢は平均78.8歳であった。骨折型はAnderson分類Ⅱが5例、Ⅲが7例であった。保存治療において、頚椎カラーによる外固定が8例、ハローベストによる外固定は4例であった。経過中死亡例は3例であった。頚部痛のVASは平均0.5、下肢運動機能の頚髄症JOAスコアは平均2.5であった。
2.80歳以上の高齢者骨脆弱性軸椎骨折の治療 ―粗鬆化軸椎にスクリューは効くか?―
 
高知医療センター 整形外科

時岡 孝光(ときおか たかみつ)、小田 孔明
 
骨脆弱性軸椎骨折に対してスクリューが無効なことがあり、治療戦略を見直した。
【対象】手術を行った80歳以上の軸椎骨折は20例で、骨折型はAnderson Ⅱ型が8例、Ⅲ型12例(10例で関節突起間骨折を合併)であった。椎骨動脈走行異常(high riding VA)は20例中13例(65%)に存在し、手術は前方法を4例、後方法16例(後頭頚椎固定3例、MICEPS法5例、Magerl法1例、headless compression screw による骨接合3例、椎弓下wire 固定4例)を行なった。3ヶ月以内の死亡が3例で、その他の17例は骨癒合を確認できた。
【考察】Ⅱ型では強固な固定が必要であるがhigh riding VAの存在により後外側進入でMICEPS法を選択した。Ⅲ型は骨粗鬆が高度で椎体の粉砕だけでなく、関節突起間にも骨折が及び、症例ごとに適宜スクリューによる固定法を吟味した。全身状態不良例にはC1-2椎弓下wiring とテリパラチド製剤投与を行い、骨癒合を得た。
3.環軸関節脱臼を伴った軸椎歯突起骨折の2例
 
国立病院機構 熊本医療センター 整形外科

田畑 聖吾(たはた しょうご)、橋本 伸朗、福元 哲也、前田 智、中馬 東彦、平井 奉博、松下 任彦、島田 真樹、谷村 峻太郎
 
【はじめに】高齢化社会に伴い骨粗鬆症性椎体骨折や歯突起骨折の増加が報告されている。稀な、環軸関節脱臼を伴った軸椎歯突起骨折の2例を報告する。
【症例1】72歳男性。転倒にて受傷し、完全麻痺となり当院へ搬送となった。Andrson Ⅱ型の歯突起骨折および両側の環軸関節後方脱臼を認め、軸椎下は骨性癒合していた。MRIでは脊髄の圧迫と髄内輝度変化を認めた。ハローベストを装着し、Goel-Harms法にて脱臼整復し、後方固定術を施行した。術後1年半、骨癒合し整復位も保持されている。
【症例2】86歳女性。転倒にて受傷。Andrson Ⅱ型の歯突起骨折および右環軸関節後方脱臼を認めた。斜台、環椎前弓で骨性癒合を認めた。運動麻痺は認めなかった。ハローベスト装着後に後頭骨頸椎後方固定術(O-C4)を施行した。術後1年implantの緩みなく経過良好である。
【考察】2例とも環軸椎と隣接での骨性癒合を認めた。歯突起骨折に伴い可動性のある環軸関節にストレスが増加し脱臼骨折したものと思われる。
4.頚椎OPLL前方除圧固定術後20年目に前方支柱移植骨々折を来し頚髄症を再発した1例
 
くぼかわ病院 整形外科1、高知大学医学部 整形外科2
 
木田 和伸(きだ かずのぶ)1、谷 俊一1、高谷 将悟2、田所 伸朗2、喜安 克仁2、武政 龍一2、池内 昌彦2
 
【症例】症例は70歳男性で、頚椎OPLLに対して20年前にC4-7の腸骨遊離血管柄付き支柱骨移植による頚椎前方固定術が施行されており良好な術後経過が得られていた。しかし、術後20年目に明らかな外傷なく頚部痛出現、その後四肢不全麻痺が認められ当科受診となった。レントゲン上は移植骨の骨折と頚椎後弯変形が認められ、固定上位隣接椎間であるC3/4にOPLLの残存が認められた。病態はMRIおよび電気生理学的診断の結果も踏まえ、C4-7での後弯変形に伴う脊髄牽引が発生し、潜在性狭窄部位であるC3/4での脊髄障害の顕在化したと判断された。手術はこの結果も踏まえて、主病巣であるC3/4の後方除圧および支柱骨骨折に伴うさらなる後弯変形を防ぐためにC3-7までの側塊および椎弓根スクリューを併用した後方固定術を行い良好な結果を得ている。支柱移植骨の骨折発生については重労働者であったこと、特発性血小板減少症に対して15年前よりのステロイド服用歴があったことなどが関与していると考えられた。
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