13.頚椎部の硬膜より発生したhemangiopericytoma(SFT)の1例 長崎大学 整形外科 津田 圭一(つだ けいいち)、田上 敦士、安達 信二、山田 周太、尾崎 誠 【はじめに】硬膜由来のhemangiopericytomaは比較的稀な腫瘍である。術前画像では神経鞘腫などが鑑別に挙げられる。 【症例】22歳女性。四肢麻痺を認め、手術治療を行った。硬膜内髄外腫瘍の形態であった。手術は椎弓形成術を行い、硬膜を切開。腫瘍は1本の根糸と強く接するように存在し、また硬膜内で外側とも接するように存在した。術中は神経鞘腫を想定して手術を行っていたが、髄膜腫の可能性も考え腫瘍付着部の硬膜内層切除と外層焼灼も行った。術後の病理結果はhemangiopericytoma WHO grade Ⅱであった。術後に放射線治療を施行した。 【考察】hemangiopericytomaはSFTと同様のものと考えられ、頚椎の硬膜発生は稀である。エビデンスのある治療方針は確立されていない。当院で脊椎発生SFTは2016年までに4例あり、本症例以外は硬膜外腫瘍の形態を呈していた。術前画像診断でSFTが第1選択になるものはなかった。さらに手術治療を行った頚椎発生の硬膜内髄外腫瘍をみてみると神経鞘腫が最も多くダンベル腫瘍の形態しているものが多かった(8例中6例)。 【結語】頚椎脊柱管内にcystを伴わない、造影効果が高い、非ダンベル型形態の腫瘍をみた場合にはhemangiopericytomaを考慮する。 |
14.診断に苦慮した頸髄髄内腫瘍の一例 大分整形外科病院1、うちかど脳神経外科クリニック2 眞田 京一(さなだ きょういち)1、大田 秀樹1、松本 佳之1、井口 洋平1、巽 政人1、塩川 晃章1、木田 浩隆1、竹光 義治1、内門 久明2 【はじめに】左腎癌摘出の既往があり右多発性腎嚢胞を有する患者に長大な空洞を有する頸髄髄内腫瘍が発見された。病歴から考えVHL 病に伴う頸髄髄内血管芽腫と診断し摘出術を行ったが、病理は意外な結果であった。考察を含め症例を報告する。 【症例】49歳、女性。2年前から左下肢のしびれ、歩行困難あり当院受診。既往として7年前腎癌にて左腎摘出。MRI にて空洞を伴う頚髄髄内腫瘍があり、病歴からVHL 病に伴う頸髄髄内血管芽腫と診断した。前医の診断も左腎癌、右多発性腎嚢胞+腎癌疑いの所見よりVHL病の可能性大とのことであった。術中所見も血管芽腫として矛盾しなかったが、病理診断は腎癌の転移であった。術後は痺れの残存はあるが大きな脱落症状は無い。 【考察】VHL 病は中枢神経、網膜に血管芽腫、他に腎癌、多発性腎嚢胞などを生じる遺伝性疾患である。われわれは髄内腫瘍をVHL 病に伴う血管芽腫と診断したが、結果は腎癌の転移であった。予後を大きく左右する結果であり、先入観に囚われた安易な診断には注意を要する。 |
15.C2-3 レベルに発生したダンベル型リン酸塩尿性間葉系腫瘍の1例 九州大学病院別府病院 整形外科1、九州大学 整形外科2 齋藤 武恭(さいとう たけゆき)1、薛 宇孝2、幸 博和2、遠藤 誠2、松本 嘉寛2、中島 康晴2 【はじめに】リン酸塩尿性間葉系腫瘍(以下PMT)は、腫瘍細胞による過剰なFGF23 産生により、尿細管でのリン再吸収が阻害されて腫瘍性低リン血症性骨軟化症を来たす稀な腫瘍であり、特に脊椎発症の報告は少ない。 【症例】52歳女性。2006 年頃から易骨折性を認め、2010年頃から歩行不能となった。誘因なく生じた両上肢痛を主訴に2017 年3 月に前医内科を受診。両上腕骨骨折を認めるとともに、血中リンの低値を認めた。オクトレオスキャンでC2椎体右側に異常集積が認められたためPMTと診断した。腫瘍はC2-3レベルの脊柱管内外に存在し、造影CTにて右椎骨動脈が本腫瘍内を走行していたため、術前に右椎骨動脈閉塞術を行った。前方および後方から2期的に腫瘍切除を行い、後頭骨-頚椎固定術を施行した。術後1日目でFGF23が、加えて術後1週でリンが正常値に改善し、現在各骨折部位に骨癒合が認められ、立位・歩行訓練が可能となっている。再発を認めやすいとの報告があり、現在も注意深く経過観察中である。 |
16.頚椎後縦靱帯骨化症術後発生したデスモイド腫瘍の一例 大浜第一病院 整形外科1、琉球大学 整形外科2 宮里 剛成(みやざと たけなり)1、野原 博和1、山川 慶1、當銘 保則2 【症例】67歳、男性。1年半前から1本杖歩行となり他院を受診。四肢麻痺、痙性跛行で当院を紹介され受診。頚椎後縦靱帯骨化症の診断でC2‐C7頚椎拡大術を行った。 術後10 ヵ月で、手術創部皮下につっぱり感のある腫瘤を自覚した。腫瘤は発赤、熱感、圧痛無く、弾性硬で可動性はなかった。腫瘤は発覚後1ヵ月で増大した。MRIでは、拡大した椎弓近傍の黄色靭帯から右僧帽筋内へ浸潤する腫瘍を認めた。T1WIで筋肉と同程度の低信号、T2WIで淡い不均一な等信号、腫瘍内部全体が強い造影効果を示した。造影CTで腫瘤内部は比較的均一に造影された。琉球大学整形外科腫瘍班へ紹介し、切開生検の病理でデスモイド腫瘍の診断であった。現在トラニラスト(リザベン)内服中である。 【考察】デスモイド腫瘍は、転移はしない線維性軟部腫瘍である。全身の至る部位に発生し、手術による再発率が高い腫瘍である。当症例ではMRIで造影され、増大傾向であったが、疼痛や麻痺がない、自然消退する可能性がある、完全摘出が困難で再発の可能性が高いことから、摘出手術は避け経過観察中である。 |
17.頚椎から頚胸椎移行部に発生した脊髄腫瘍における周術期合併症について 熊本大学 整形外科 藤本 徹(ふじもと とおる)、谷脇 琢也、岡田 龍哉、中村 孝幸、中村 英一 【目的】周術期合併症が多い頚椎から頚胸椎移行部の脊髄腫瘍症例を検討した。 【方法】2008年1月~2017年7月まで頚椎から頚胸椎移行部の脊髄腫瘍摘出術36 症例における再手術例や神経根切除に伴う支配筋MMT の推移を評価した。 【結果】平均経過観察期間は29ヶ月、病理診断は神経鞘腫17例、髄膜腫9例、神経線維腫7例、上衣腫2例、良性黒色腫1例で、再手術症例は感染、髄液漏、偽性髄膜瘤がそれぞれ1例(2.8%)で、残存腫瘍3例(8.3%)であった。髄液漏・偽性髄膜瘤は腹側硬膜切除を要した髄膜腫例で、残存腫瘍例は髄膜腫が2例・神経鞘腫が1例で再手術施行した。C5 ~ T1神経根高位発生例での前根切除例(切除群)は6例で温存可能例(温存群)は7例で、切除群のMMTの推移は術前:平均4.6±0.5、術直後:3.3±0.9、術後2週:3.8±0.4、術後1年:4.2±0.5で、温存群は術前:4.1±0.6、術直後:4.2±0.6、術後2週:4.9±0.4、術後1年:5±0 であった。 【考察】髄膜腫腹側発生例は人工硬膜縫合不可で術後髄液漏・偽性髄膜瘤を認めたがバイクリルメッシュ使用にて改善した。前根切除すると術直後より筋力低下を認めたが術後徐々に改善し高度な運動障害を示す症例は無かった。 【考察】TDS法は固定力が強く、固定範囲の短縮が可能と考えられる。骨折型によっては尾側で挿入が難しい状況もある。 |